ライトな憑依作品です。
雰囲気は「〜行こう!」シリーズに近いものがあります。

二週間ほど前から友人の澄明が付き合っている一つ年下の彼女、瀬都奈に好意を持つ星彦。
でも、別に澄明は瀬都奈と付き合う気がないらしい。
その理由を聞き、そして澄明と星彦が取る行動とは?

タイトルが長すぎてカテゴリ追加できませんでしたので、カテゴリはタイトル省略ですw
挿絵には、でじたるメイトのキャラと、フリー背景素材(きまぐれアフターさん)を使用しています。



 夕方前の駅前は相変わらず賑やかだ。普段ならバスケットボール部の部活を終え、星が見え始めることに帰るのだが、昨日の日曜日に試合があったため、今日の部活は中止となっていた。太ももに痛みを感じるが、筋肉痛ではなく、相手と接触した際に痛めたからだ。
 糸村星彦(いとむらほしひこ)は、対面の歩道を歩いている高校生を眺めていた。隣町の高校だろう。紺色のブレザーが着たかった彼は、今通っている高校の制服が好きではなかった。

「何、ぼーっと見ているんだ?」
「えっ。いや、何でもないけど」
「可愛い女の子でもいたのか?」
「そういう訳じゃないけどさ。俺も制服はブレザーが良かったなって」

 星彦の様子を見ていた共原澄明(いはらすみあき)が肩を軽く叩き、顔を近づけてきた。同じ部活仲間で、高校では一番の友人だ。スポーツも出来るし、成績も悪くない。星彦よりも顔がよく、いつも彼だけがモテるところは少し嫉妬する。しかし、彼と一緒にいれば何もしなくても女子が近づいてくるし、一緒に遊びに行くこともあるので嫉妬と相殺できていた。

「ねえ澄明。私、今日は暇だから、このまま何処かに遊びに行かない?」
女子高生憑依バージョン01
 二人の後ろに並んで付いて来たのは、澄明が付き合っている多埜瀬都奈(おおのせつな)と、その友達の伊織いう二年の女子達だ。瀬都奈は女子バスケットボール部のレギュラーで、可愛い顔立ちとポニーテールの黒髪は男子生徒から人気があった。そんな瀬都奈と澄明ならお似合いだと星彦は思っている。彼らが付き合い始めて二週間。澄明のことだから、すぐに最後までしているのではないかと気になったが、あまり男女関係のプライベートな事まで聞くのは気が引ける――というか、今回は聞きたくないという気持ちが大きかった。
 瀬都奈は星彦から見ても可愛かった。中学のころからポニーテールが好きだった彼は、出来ればこんな女子と付き合いたいと思っていたのだ。澄明と瀬都奈がセックスをしているシーンを想像すると心が少し痛む。しかし、こうして身近なところに彼女がいて、その声を聞くことが出来るのは彼のおかげである事も認識していた。

「そうだな。どうする星彦、一緒に遊びに行かないか? ちょうど二人ずつだし」

 澄明が瀬都奈の隣に視線を移すと、無言で話を聞いていた伊織は少し曇った表情を見せた。

「あの、ごめんなさい。今日はちょっと用事があって」
「そうか。残念だな、折角ダブルデートできると思ったのにさ」
「ダブルデートって、伊織には彼氏がいるんだよ」
「えっ、そうなんだ。じゃあどの道無理か」
「駅前のレンタル屋にDVDを返しに行くの、付き合ってもらうって約束をしてただけだから」

 その言葉に同調するように、「俺も……いいよ。だから澄明と多埜さん、二人で行けば?」と星彦が口を挟んだ。

「さて、どうしようかなぁ」

 顎に手を添えながら少しの間考えた澄明は、「やっぱり今日は帰るか」と瀬都奈の誘いを断った。

「そっか。じゃ、仕方ないね。今度の日曜日は空いてる?」
「ああ、大丈夫だけど」
「それなら日曜日に二人で遊ぼうよ。いいでしょ」
「構わないよ」
「うん。じゃあ私、このまま伊織とレンタル屋に寄ってから帰るね」
「じゃあな」
「じゃあね、澄明。糸村さんも」
「あ、うん」

 ついでに名前を呼ばれた星彦は、慌てて返事をした。少しの間、瀬都奈たちの後姿を見ていた星彦に、澄明が尋ねた。

「なあ星彦。お前、瀬都奈の事を気に入ってるんだろ?」
「えっ。な、何だよ突然」
「お前が瀬都奈を見つめる目は、俺が今まで付き合ってきた女子を見る目とは全然違うからな」
「そんな事が分かるのか?」
「まあ、同じ男同士だし……ていうか、やっぱりそうなんだ」
「……ま、まあな」
「そうだなぁ。瀬都奈はなかなか可愛いけど、実は俺としてはそれほど好みじゃないんだ」
「嘘だろ。あんなに可愛いのにさ」
「なあ。腹が空いてないか? ちょっとそこのファーストフード店に入ろうぜ」
「……ああ。いいけどさ」

 澄明に促された星彦はファーストフード店に足を踏み入れた。同じく高校生達が何グループかいて、テーブルの足元に大きなカバンを置いている。野球部やサッカー部の連中だろう。そう思いながら別々のレジでハンバーガーセットを購入た二人は、窓際のカウンター式の椅子に座った。目の前がガラス張りになっており、行き交う人々や車が良く見える。
 隣同士で座った星彦が、ジュースを口にしながら話を始めた。

「なあ。お前、さっき多埜さんの事、それほど好みじゃないって言ってたけど、好みじゃないのに付き合っているのか?」
「俺が好みの女子って大体分かるだろ?」
「……まあ、どちらかというとお姉さんっぽい感じが多いかな。年下よりも同級生、それも大人びた雰囲気の女子か」
「分かってるじゃないか。それに比べて瀬都奈はどうだ?」
「それを言うなら、どうして多埜さんと付き合ってるんだよ。好みじゃないなら、最初から付き合わなければいいじゃないか」

 彼の言い方に、星彦は少し苛立った。まるで瀬都奈が、次の彼女が出来るまでの繋ぎという感じで扱われているような気がしたからだ。ジュースを一気に半分ほど飲み、大きく口を開けてハンバーガーにかぶりつく。その様子を見ていた澄明は、軽くハンバーガーをかじると、窓の外に映る慌しい風景を見ながら口を開いた。

「お前が瀬都奈の事を好きなのは、もっと前から知ってたよ。体育館で練習しているときも、結構彼女に視線を向けてただろ。あの様子を見ていたら、誰でもお前が気にしている事が分かるよ」
「俺が彼女の事、好きだと分かっててわざと付き合ったのか? それってすげぇ嫌がらせだと思うんだけど」
「そう取られたらそれまでだけどさ。星彦って自分から積極的にアタックしないだろ。俺が彼女と付き合ったら、少しは何かを感じてくれるかなって思ってさ。例えば、俺に取らるのが嫌だから、自分から何かを始めなきゃならないとか」
「……それって、俺のためにわざと付き合ってるって事?」
「俺だって、最初からモテてたわけじゃないんだぜ。一生懸命勉強したし、スポーツもしたし。ま、顔は生まれ持ってだからどうしようもないけど。女にモテる勉強もしたんだ。要は、努力しなければ何時まで経っても前に進まないって事さ!」

 最もな事を言われたような気がするが、星彦の気持ちはまだ曇っていた。自分のために動いてくれる友人の優しさを感じると共に、軽い気持ちで付き合い、恐らくセックスまでした彼の行動に憤りを覚えるのだ。

「そうかもしれないけど、彼女の気持ちはどうなるんだよ。きっと多埜さんはお前の事が好きで付き合っているだろうし」
「そう思うか?」
「違うのか? さっきも日曜日に遊ぼうって、彼女から言ってきたじゃないか」
「まあ、俺の事が好きかも知れないけど、彼女もまた俺と同じようにモテるからな。俺が特定の彼氏という訳じゃないみたいなんだ」
「そ、そう……なんだ」
「ああ。今頃、別の男子に連絡を取っているんじゃない? 今日は暇だから遊ばないかってさ」
「もしかして、彼女って軽い女……なのか?」
「いや、そういう訳でもないみたい。ほんとに好きな男としかセックスしないらしいから。誰でもホイホイっていうような軽い女子じゃないさ。考え方も結構しっかりしているし、手料理だって作れるんだぜ」
「……よく知っているんだな。やっぱり付き合っているだけの事はあるか」
「お前、俺が瀬都奈とセックスしたと思っているだろ」
「違うのか?」
「まだしてないんだ。言ったように、軽い女子じゃない。逆に彼女は俺を軽い男だと思っているみたいで、今は彼女にいろいろと調べられてるって感じさ。今度の日曜日も、すぐに俺が手を出すかテストするつもりなんじゃないかな」
「……用心深いっていうか、理想の男を捜しているんだな」
「そうかもしれないな。ま、その相手は俺じゃないみたいだけど……っていうか、俺だったら困るよ」

 澄明は一通り喋り終わると、ハンバーガーを頬張りジュースを飲み干した。星彦も次第に気持ちが軽やかになってゆく事を感じ、ハンバーガーを頬張った。

「でもさ、もし多埜さんが自分からセックスを求めてきたら、どうするつもりだったんだ?」
「さあなぁ。星彦、お前ならどうするよ。彼女が求めてきたら」
「そ、そりゃ……断る理由なんてないから」
「俺も同じだよ」
「……だよな」

 店を出た二人は、駅までゆっくりと歩き始めた。先ほどよりも人が多くなっており、買い物帰りの主婦やスーツを着たサラリーマンの姿が目立つ。

「部活から帰る頃は、こんなに人がいないのに」
「そうだな。今が一番多いんじゃない? 俺たちが帰る頃はスーツ姿のおっさんばっかだから」
「だよな。さてと、今日は早く帰ってゆっくりするか。録画していたテレビ番組、貯まってるから」
「なあ星彦。お前、帰っても暇なんだろ?」
「まあな。親も共働きだから帰ってくるの遅いし」
「そっか。俺さ、お前にまだ言ってない事があるんだ」
「何だよ?」
「さっきのモテる話」
「ああ、もっと自分を磨けって事だろ。分かってるよ。俺なりに努力はしてみるつもりさ」
「モテるためにはさ……」

 周囲を見渡した澄明は、星彦の耳元で小さく囁いた。

「セックスが上手くなきゃダメなんだぜ」

 その言葉に、しばし沈黙した星彦は少し顔を赤らめながら「そ、そんな事分かってるさ。でも、俺はそんな経験ないから」と、前を見ながら呟いた。

 「女がどうすれば感じるのかが分かっていれば、虜にする事だって出来るんだ。今まで付き合ってきた女子がそうだったように」
「何だよ、お前の自慢話なんて聞きたくないって」
「違うって。そういう意味じゃなくてさ。お前に教えてやるよ」
「……何を?」
「どうすれば女が感じるのかを」
「い、いいよそんなの。澄明に教えられるなんて恥ずかしいし、男同士で面と向かって解説されるのもキモいだろ」
「俺さ、どんな女でも、どうすれば感じるのか分かるんだ。性感帯ってやつ? 女って、男みたいに単純じゃないんだぜ」
「わ、分かったからさ。そんな事、今この場で話す内容じゃないだろ」
「まあな。とりあえず家にいるんだろ? しばらく外に出るなよ」
「……どうしてさ」
「ずっと内緒にしておくつもりだったけどさ。お前になら話してもいいと思って」
「何をさ」
「それは後で教えてやる。兎に角、先に家に帰っててくれよ。じゃあな」
「えっ! す、澄明!?」

 意味深な言葉を残した彼は、そのまま近くの百貨店に向かって走っていった。

「な、何だよあいつ。内緒にしておくつもりだったって。俺に秘密があったのか? 無理に聞きたいなんて思わないけど」

 友人とはいえ、秘密なんて幾らでもあるだろうに。そう思いながら、星彦は駅の改札口をくぐると、少し混み合う電車に乗った――。