この作品は若妻が寝取られるなど、ダークな内容が含まれる予定ですので、そのような内容に興味のある方のみ、閲覧いただきますようよろしくお願いします。
 それは彼女が今までに感じたことの無い違和感だった。

(そろそろ起きなくちゃ)

 穏やかな夜の眠りから意識を覚醒させた優紀子は、自然と瞼を開こうとした。しかし、何故か開かない。自分はまだ眠っているのだろうか。そう思いながら、今度は意識して瞼に力を入れた。

(あれっ? 開かない)

 もしかしたら、こうして起きようとしているの夢を見ているのかもしれない。一瞬、そんな風に思った。ただ、布団を被っている暖かさや窓の外から聞こえているであろう鳥の囀りは妙にリアルであり、夢を見ているとは思えなかった。 顔や指、足を動かそうとしても、思い通りに動かない。意識だけが目覚めて、体は眠っている状態のようだ。
 金縛りにでも遭っているのだろうか?
 はっきりとした意識の中、彼女はそんな風に考えた。何も出来ないのなら、もうしばらく眠っていようか。そうも思ったが、隣で寝ている夫の順二を起こさなければならない。
 瞼から透ける明かりは、朝日が窓から入ってきている事を物語っているであろうから。

(そう、早く起きなくちゃ)

 それでも瞼は開かず、体は動かない。一体どうなっているのだろうか。彼女に少しの焦りが見え始めた頃、頭の上から目覚まし時計の電子アラーム音が聞こえた。

「んん……」

 優紀子は寝返りをした。ようやく体が動き始めたのだ。しかし、いつもと様子が違っていた。

(えっ?)

 何が起きているのか分からない。彼女はゆっくり瞼を開くと、枕元にある目覚まし時計を確認し、顔の前に垂れるダークブラウンの髪を手で軽く払いながらアラームを止めた。 そして、大きなあくびの後、精一杯の背伸びをして上半身をベッドから起こした。

(ど、どうなっているの?)

 優紀子は戸惑った。なぜならば、今までの行動は彼女がそうしようと思ってやったわけではなく、【体が勝手に】動いたからだ。

「順二起きて。会社に遅れるわよ」
「う……んん。もう少し寝かせてくれよ」

 彼女の右手が、夫の肩を揺らしている。

(えっ? えっ?)
「起きないのなら、オチンチンをしゃぶっちゃうから」
(な、何言ってるの? か、勝手に口が……)

 自分の口からオチンチンという卑猥な言葉が出るなんて信じられなかった。生まれて初めて口にしたのだ。

「うう〜ん。どうぞご自由に」

 寝ぼけているのか、適当に返事をした順二に、優紀子はパジャマのズボンを捲り、朝立ちしている夫の肉棒を曝け出した。そして、「順二のオチンチンは元気に起きているのにね」と言いながら、ためらいも無く口に含んでしまったのだ。

(ちょ……ううっ!)

 驚いて目を瞑ろうとしたが、彼女の瞳は愛しそうに肉茎を眺めていた。軽い小便と生臭さが鼻につき、嫌悪感を覚える。それでも彼女の口は肉棒の根元まで咥え込み、表情は淫猥であった。その口内の生温かく蕩ける様な舌使いに、順二も一気に目が覚めたようだ。 慌てて上半身を起こし、肉棒を咥えた妻を確かめた。

「ゆ、優紀子。お、お前……うっ」
「んんっ、んくっ。んふふ、目が覚めた?」
「そりゃ覚めるに決まってるだろ。まさか優紀子がそんな事をするなんて思っても見なかったから……っていうか、どうしたんだよ」
「どうしたって?」

 優紀子は勃起した肉棒を口から解放すると、細くしなやかな手でゆっくりと扱きながら彼を淫らに見つめた。彼女の潤んだ瞳に吸い込まれそうになった順二は、肉棒を扱いている手に視線を下ろした。

「うっ。はぁ」
「気持ちいい?」
「あ、ああ。イッちゃいそうだよ」
「へぇ〜、そうなんだ。クスッ。でも、会社に行く前にイクと疲れるでしょ。すぐに朝食の準備をするから」
「えっ……。あ、ああ。そうだな」

 そのつれない言葉に残念そうな表情を浮かべた彼は、彼女が寝室を出た後、フェラチオの感覚を思い出しながら自らの手で肉棒を扱いたのであった。

(どうして? 一体どうなってるの!?)

 自分の行動が全く理解できなかった。こうしてパンを焼き、コーヒーを入れている姿はいつもの自分と変わらない。しかし、彼女自身がそうしようと思って行動しているわけではないのだ。体が勝手に動き、普段の優紀子を【演じて】いる。意識して体を動かそうとしても、全く動かない。視線は他人が撮っているカメラの映像を見ているかのように強制的に動かされ、息すら思い通りに吸う事が出来なかった。自分の体であるのに、五感を全て認識できるのに、自分の体ではない感覚に囚われた。
 キッチンテーブルで順二と対面に座り、朝食を取る。普段の優紀子と同じ言動を行う体に対して、夫である順二に気づいてくれと願うには無理があった。

「今日は遅いの?」
「ああ。優紀子は?」
「うん、ちょっと遅くなるかもしれないけど、八時には帰って来れると思うわ」
「そうか。俺もそれくらいに帰れたらいいんだけどな。みんなに言われるよ。新婚なんだから早く帰らないと美人の奥さんに捨てられるぞってさ」
「別にいいよ。私だって働いているんだから。専業主婦になればもっと時間を掛けた夕食を作ってあげられるけど……もう少し働きたいの」
「分かってる。俺も一生懸命仕事をしている優紀子を見るのが好きだから。ご馳走様」

 順二は手早く用意を済ませると、玄関で彼女にフレンチキスをし、先に家を出た。優紀子が家を出るまでに三十分程度の時間がある。普段は手際よく洗濯をし、身支度を整えるのだが、今回は様子が違っていた。洗濯が終わり、先に化粧を済ませた彼女は寝室でパジャマを脱ぎ、下着姿になった。今日、着る予定のスーツをベッドに寝かせると、壁際に置いている姿見の前で全身を映し出す。胸は比較的大きく、括れたウェストに脂肪がついていない腹部がとてもセクシーで魅力的だ。刺繍の入った白いブラジャーに、お揃いのパンティが大人の女性をかもし出し、優紀子のほほを緩ませた。右手を腰に当てながら体を捩じり、白い生地に包まれた尻を姿見に映すと、彼女は「へへっ」と小声で笑った。

(私の体……な、何してるのっ?)

 姿見の前で、そのセクシーなスタイルを自慢するように色々なポーズを取った彼女は、ブラジャーのカップを引っ張り覗き込んだ。自分の下着姿に興奮しているのか、両方の乳首が勃起している。その様子を見てニヤリと笑った優紀子は「いやらしい体だなぁ」と呟くと、パンティのゴムを引っ張り、薄っすらと陰毛に包まれた股間をまじまじと眺めた。 満足そうに鼻で笑い、スッとパンティの中に手を忍ばせる。女性ならではの滑らかな股間に指が這い回る様子は、まるで何も付いていないという事を確かめている感があった。

(い、いやっ。触らないでっ)

 優紀子は自分の手で撫でているにも拘らず、何故か気持ちが悪くなり意識の中で叫んだ。それが通じたのか、彼女の手がパンティの中から出てくると、肌色のパンストを身に付け、白いブラウスと紺色のスーツ、そしてタイトスカートを穿いた。

「よし、これでいいわ。へへ、時間がないから楽しみは取っておく事にするか。先にOL生活を堪能するとしますかね。優紀子ちゃん!」
(えっ。どういう……事?)

 自分の口から出た言葉の意味が理解できなかった。まるで意識の状態である自分に、体が話し掛けてきた様な口ぶりだ。しかも、男性のような感じの喋り方に、彼女は大いに戸惑った。

「このスーツ姿がまたたまんねぇよな。やっぱりスーツ姿ってのはそそられるよ」

 また男性の口調で呟いた優紀子は、嬉しそうに玄関へ向かうと、黒いローヒールを履いて家を出た。