この作品は、同人誌「入れかえ魂Vol.3」「入れかえ魂Vol.4」に掲載された「どうにもならない(前編)」と「どうにもならない(後編)」となります。
 先生が大好きな高校生が、彼女の体を乗っ取り、色々な悪戯を行います。また、その性質上ダークな展開になりますので、読みたいと思われる方のみ、閲覧くださいませ。
「こんにちは」
「あ、村内先生」
「もう部活は終わったの?」
「ええ。でも珍しいですね、村内先生が覗きにくるなんて」
「そうね、少し時間があったから」

 女子剣道部の部室では、十人あまりの女子生徒たちが剣道着からセーラー服へ着替えを行っている最中だった。この部室の汗臭い匂いは、他の部活動をしている女子生徒たちの部室とはかなり違うだろう。部屋の隅に置かれている紺色の胴や面を直接匂う気にはなれない。
 しかし、この女子生徒たちの汗臭い匂いが吾郎にはたまらないらしい。
 白い剣道着と紺色の袴を脱いで、下着姿になる女子生徒たち。
 吾郎は、無造作に置かれた白い剣道着を智恵の手で持ち上げた。しっかりした生地は、ずっしりと重い感じがする。そして手のひらには汗で湿った剣道着の感触が。

「ねえ高橋さん、この剣道着ってぜんぜん洗ってないんじゃないの?」

 智恵は手に持った白い剣道着を鼻につけてくんくんと匂った。高橋さんの汗臭い匂いが鼻の中にモワッと広がる。

(く、臭い……)

 智恵は遠慮したいのだが、吾郎が何度も何度もその汗臭い臭いを鼻に吸い込むのだ。

「一週間はずっと使いますから。だって洗うの面倒だし、重いから持って帰るのが大変なんだもの。皆、そうしてますよ」
「そう」

 手にした剣道着を長机の上に置いた智恵は、女子生徒たちの着替えをじっと眺めていた。
 ガヤガヤと楽しそうに話しながら着替えている生徒たち。目の前にいる智恵に吾郎が乗り移っているなんて事は誰一人として気づかない。

(藤田君っ、早く出て行きなさいっ)

 智恵が吾郎に言うのだが、吾郎はまったく無視しているようだ。
 今年入学した一年生、そして卒業する三年生。その体つきを見比べると、やはり三年生の方が女性らしかった。胸やお尻の大きさは人それぞれ。だが三年生には全体的な体つき、腰のくびれ具合や太ももから脹脛、足首にかけてのラインに違いを感じる。少しずつ大人に近づこうとしているラインだ。

「ねえ村内先生。もしかして、Tシャツの中ってノーブラ?」

 着替えを終えた女子生徒の一人が智恵に話しかけてきた。

「そうそう。先生って今日の授業中、なぜかセクシーだったよね。あの時もやっぱりノーブラだったの?」
「あら、バレてたの。今日はブラジャーを付け忘れてきたのよ」
「うそだぁ。そんなの忘れるはずないよ。わざと付けて来なかったんでしょ」
「きゃ〜、やらしぃ〜」

 女子生徒たちが智恵を冷やかす。
 でも智恵はうれしそうな表情をしながら、「違うわよ。本当なの、朝はちょっと遅刻しそうになったから急いでいたのよ」と答えた。
「そんなことで忘れるかなぁ」
「私は寝るとき、いつもノーブラで寝るからね」
「そうなの?」
「そうよ」

 本当はブラジャーをしっかりとして寝ている智恵。吾郎は分かっていながら、わざと嘘をついていた。
 そんな吾郎に何を言っても無駄だと分かっている智恵は、その言動を黙って監視していた。しばらく他愛もない話が続くと、女子生徒たちの着替えが終わる。

「それじゃあ先生、さようなら」
「さようなら、鍵は誰が持っているの?」
「あ、私です」
「先生が職員室に返しておいてあげる」
「え、いいんですか?」
「いいわよ、今から職員室に戻るから」
「それならお願いします」
「ええ」

 女子生徒は鍵を智恵に手渡すと、ガヤガヤ部室を出て行った。
 その後姿を見送った智恵は誰もいなくなったことを確認すると、一人部室に入って内側から鍵を閉めた。

(藤田君、いったい何を……)
「着てみようと思って、剣道着を」
(なっ……や、やめてよそんな事っ)
「いいからいいから」
(勝手に生徒の服を着るなんて)
「というか、汗臭いから着たくないんじゃない?」
(こんなの……へ、変態よっ)
「変態でも構わないさ。他人が見たら先生が変態なんだから」
(ダ、ダメよ。止めて……)
「え〜と、須藤さんのロッカーは……」

 吾郎は須藤あざみという女子生徒が、智恵と同じくらいの背丈であることを先ほどの着替えで確認していたのだ。
 鍵の掛かっていないあざみのロッカーを空けると、まだ湿っぽい白い剣道着と紺色の袴が吊ってあった。それを手にして、長机の上に置いた智恵。
 Tシャツの上から着るのかと思いきや、勢いよくTシャツを脱いで上半身裸になってしまう。

(やだっ……)
「まずはこの剣道着から……」

 手に取った剣道着の袖に腕を通す。すると、腕に冷たい感触が伝わってくるのと同時に、汗臭い匂いが鼻をついた。

「須藤さんの剣道着もすごく汗臭いなぁ」

 そう言いながら、今度はジーンズを脱いで青い袴に足を通した。初めて穿く袴であっても、智恵のスカートを穿く記憶を使い、それらしく穿きこなす吾郎。
 腰にある紐をぎゅっと結ぶと、智恵の体が須藤あざみの剣道着に包まれた。

「どう? この剣道着姿は。勇ましく見えるかな?」
(早く脱ぎなさいよ。誰かが来たらどうするのよ)
「大丈夫だって。鍵もしっかり掛けているしさ」
(怪しいじゃないのっ。部室の中に私一人でいるなんて)
「先生なんだから怪しくないって」

 そう言いながら智恵の体を動かし「面っ、胴っ」と素振りの真似をする。

(ちょっとっ!)

 智恵が頭の中で大きく声を上げたとき、

 トントンッ!

と部室の扉を叩く音がした。