この作品は、同人誌「入れかえ魂Vol.3」「入れかえ魂Vol.4」に掲載された「どうにもならない(前編)」と「どうにもならない(後編)」となります。
 先生が大好きな高校生が、彼女の体を乗っ取り、色々な悪戯を行います。また、その性質上ダークな展開になりますので、読みたいと思われる方のみ、閲覧くださいませ。
 そして次の日、またしても吾郎は智恵の体に入り込んだ。今までは幽体離脱するために寝ていた吾郎だったが、今度は寝なくても幽体離脱できるようになったらしい。机の上に両肘をついて、両手のひらの上に顎を乗せてじっと目を瞑ったまま考え事でもしているかのように見えた。生徒達の前で講義しながら、教卓の下でベージュ色の綿パンツのファスナーを開いてパンティの上からクリトリスを刺激している智恵。

「はぁ、はぁ……だ、だから……この……ぅっ……数式は……」

 明らかにおかしいしゃべり方。しかし、智恵はこれが精一杯だった。好きなように体を操られ、強制的にオナニーをさせられる。こんなにたくさんの生徒が見ている前で。嫌だと否定する気持ちの裏に、何故か興奮する自分がいるような気がする。
 その興奮も手伝い、パンティがねっとりと湿り気を帯び始め、指先には透明な愛液が絡み付いていた。
 クリトリスがヒクヒクして、もうイってしまいそうだ。そんな時、急に体の自由が利くようになった。智恵は慌ててパンツのファスナーを上げると、赤らいだ顔を隠すように黒板の方へ体を向け、

「はぁっ、はぁっ……そ、それじゃあこの問題を解いてくれるかな」

 と言うと、震える手で問題を書き始めたのだった――




「ねえ藤田君……いつまでこんな事するつもりなの?」
「いつまでって、ずっとだよ」
「私ね……もう学校替わろうと思うの。このままじゃまともに授業が出来ないから」
「ええっ!そんなっ。ちょっと待ってよ。そんな事しないでよ」
「藤田君がそうさせるんじゃないの。私は……私は藤田君の玩具じゃないっ」

 授業が終わって放課後。智恵は帰ろうとする吾郎を呼び止めてそう伝えた。このままこの学校で授業を続ければきっと吾郎の好きなようにされてしまう。それなら吾郎から離れて、別の学校で授業をする方がよっぽど楽なのだ。もちろん、他の生徒や先生と別れるのは辛いのだが。

「せ、先生……」
「藤田君、もうこんな悪戯ばかりしちゃダメよ」
「…………」

 智恵はポカンと立っている吾郎に背を向けると、職員室へと戻っていった。
 急に学校を替わるなんて言われた吾郎は一瞬慌てたのだが、智恵の後姿を見送る表情には何やら笑みがこぼれ始めていたのだった。





 一夜明けて金曜日。
 学校には吾郎の姿は無かった。吾郎の家から、急に意識不明になってしまい病院に入院したと連絡があったのだ。
 きっとあんな異常とも思える事していたから、体に思わぬ負担が掛かってしまったに違いない。智恵はそう思って学校の授業を終えると、吾郎が入院している病院へと足を運んだ。
 まだ意識が戻らないと言う事で、脳波形などを取り付けられて体の状態を管理されている。特に苦しそうな表情をしているわけでもなく、小さな寝息を立てているところを見ると単に眠っているように感じた。

「すいません。わざわざ村内先生に来てもらって。今朝、吾郎を起こしに行ったら全然起きなくて」
「そうなの。別に病気ってわけじゃないの?」
「はい。熱も無いみたいですし、どこもおかしな所は無いって医師が言っていました」

 智恵が話しているのは母親ではなく、今年大学に入ったばかりである吾郎の姉、藤田 冴菜だった。冴菜は自分が座っていたパイプ椅子を智恵に差し出すと、病室の片隅にあった電気ポットまで歩いてゆき、お茶を入れ始めた。

「お母さんも来てたんですけど、私がいるから仕事に行きました。あ、すいません。私は冴菜って言います。吾郎の姉なんです」
「そう、冴菜さんっていうの。綺麗な名前ね」
「ありがとうございます。村内先生の事、吾郎からよく聞くんですよ。吾郎ったら先生の事がすごく好きみたいで」
「そ、そう……」
「村内先生は吾郎の事、どう思ってるんですか?」
「え、私?」

 冴菜は熱いお茶の入った陶器のコップを先生に手渡すと、ガラス戸のカーテンを閉め始めた。

「吾郎の事、好きなんですか?」
「そ、それは……」

 智恵は言葉を詰まらせた。手渡されたお茶を一口のみ、横にある台に置くと

「も、もちろんよ。みんな可愛い生徒なんだから」と言って、笑顔を見せた。
「そうですか。吾郎ったら面白い事言うんですよ。先生の全てを手に入れるんだぁなんて。先生と結婚したいのかも。うふふ」
「そんな事……で、出来るわけないし」
「ですよね。教師と生徒の関係なんだから。ふふ、ほんとに吾郎ったら」

 冴菜は笑顔を作りながらパイプ椅子に座っている智恵の後ろで前屈みになると、耳元でそっと囁き始めた。

「でもね先生、吾郎って本気みたいなんです」
「え? な、何が?」
「毎日学校から帰ると部屋に閉じこもって、ずっと精神統一してるんですよ。初めは何をしているのかと思ってたんですけど、すぐに分かりました。吾郎、幽体離脱が出来るようになったらしいんです。ほら、魂だけが体から抜け出る現象。村内先生も知っていますよね」
「……え、ええ……」
「ほんとに毎日練習してたんですよ。絶対先生を手に入れるんだって。私も随分手伝わされましたよ」

 そう言って、智恵の肩にそっと手を乗せた。

「え? さ、冴菜さんが?」
「そうなんです。私も最初、体が勝手に動くからビックリしてしまいました。それが吾郎の仕業だと分かった時は、思い切りひっぱたいてしまいましたよ」
「そ、そう……なの」
「だんだんエスカレートしてきて、風呂場で無理矢理胸を揉んだり、乳首を摘んだりするんです。足を開かせて、クリトリスをいじったり3本の指を膣の中に入れたりして遊ぶんですよ。何度もオナニーさせられちゃって。私、吾郎がそんな事するなんて信じられなくて。いい様に遊ばれていたんですけど、結局は先生を手に入れるための練習に過ぎなかったんですよね。私の体は吾郎の玩具にされちゃいました」

 冴菜はクスッと笑いながら、智恵の肩に乗せていた手をゆっくりと前に進めると、淡い水色のブラウスの上から胸を揉み始めた。

「あっ」
「すごいんです、吾郎の能力って。私、こうやって先生と話しているでしょ。まるで姉の冴菜のように。でもね先生。私、冴菜じゃないんです」
「やだっ、ちょっと……」
「私の記憶を全て吾郎に読み取られてしまっているんです。これまで生きてきた思い出や仕草、しゃべり方に癖まで」
「うっ……ど、どういう事なの?」
「こうやって先生の胸を揉んでいるのは……僕なんですよ、先生!」
「えっ!? あんっ……う……も、もしかして……ふ、藤田くんなの?」
「そう。僕は姉貴の全てを手に入れてるんだ。しかもこうやって姉貴を操っている間は姉貴の意識を消す事だって出来る。姉貴は今している事は全然覚えてないんだ。何故か時間だけが過ぎているって事かな」
「そ、そんなっ……そんな事って……うっ」

 胸を揉んでいる冴菜の手首を掴みながら、智恵は言った。ここに来てからずっと話していたのは冴菜ではなく、冴菜のフリをしていた吾郎だったなんて。ずっと姉の冴菜だと思い込んでいた智恵はとてもショックだった。

「やめてっ、もうっ!」

 冴菜の手を払いのけて椅子から立ち上がった智恵は、振り返って冴菜を睨みつけた。

「冴菜さんは藤田君のお姉さんなんでしょっ! そのお姉さんに何て事するのっ!」
「え? あ、大丈夫です。吾郎は可愛い弟だから。別に吾郎が私の体でオナニーしたいって言うならさせてあげるし、私に成りすまして先生を驚かせたいって言うなら黙って体を貸してあげます。それが姉弟愛じゃないですか?」
「そ、そんな事あるわけないじゃないのっ。冴菜さんの真似してしゃべるのは止めなさいっ」
「でもね、村内先生。先生だってもうすぐ吾郎に憑依されるんですよ。そしたら吾郎は先生のフリをして他人と話すんですから」
「そ、そんなの……そんなの絶対にイヤ!お願いだからもうやめてっ」

 智恵はふるふると手を震わせて叫ぶと、吾郎から逃げるように病室を飛び出してしまった。

「あ〜あ、行っちゃった。まあいいや、とりあえずもう俺の体は必要ないから捨てるとするか。しかし、自分で自分を殺すってのも気持ちいいものじゃないなぁ」

 冴菜はそう言うと、ベッドに横たわる吾郎に近づき、そっと鼻と口を塞いだ。

「さようなら、藤田吾郎君」

 そう呟き、クスッと笑った冴菜は心拍数を表示しているブラウン管を眺めていた。 息が出来なくなった吾郎の体は、特に苦しむわけでもなく、暴れたりはしなかった。しかし、脳波は確実に不安定になり、徐々に心拍数も乱れ始めると脈拍が低下し始めた。そして――

「あ〜あ、これで元に戻る体がなくなっちゃったよ」

 冴菜はニヤニヤしながら、冷たくなって行く自分の体を見つめた。
 そして、吾郎の体は二度と動く事は無かった――