「あ〜あ。風呂上がってから菓子でも食うか」
 芳郎は湯船に頭半分沈め、鼻から泡を出していた。決して下手ではない母親の料理だが、今日のトンカツと吸い物は頂けない。あんな料理を食べさせられたのは初めてだ。
 具合が悪かったのかもしれない。そう思って湯船から顔を出し、ふと脱衣所を見ると人影が見えた。いつもの様に、那津子が新しい下着を置いてくれるようだ。別段気にする事もなく浸かっていたが、何故か脱衣所から出て行かない。磨りガラスの扉に映る母親の仕草は、まるで服を脱いでいるように見えた。不審に思いながら見ていると、その扉がいきなり開いた。
「えっ?」
 彼の口から毀れたのは、戸惑いを含んだ驚きの声だった。
「芳郎。久しぶりに一緒に入ろうか」
風呂場で
 我が息子に対し、恥ずかしげも無く裸体を見せつけた母、那津子は笑いながら扉を閉めた。芳郎を産み落とし、四十を超えた体は若い頃のスタイルが維持できなくなっており、腹回りに余分な贅肉が付いていた。全体に丸みを帯びた体格は、小さい頃に見ていた母の面影と比べると明らかに見劣っており、【おばさん】と呼ぶに相応しい状態になっている。
 何と返事をしたら良いのか迷った彼だが、すぐにきつい表情を作ると、「な、何考えてんだよっ。俺はもう高校生だぞっ」と怒鳴った。
「幾つになっても私の子供よ。もしかして恥ずかしがっているの?」
 湯船の前にしゃがみ込み、笑いながら掛け湯をする那津子の瞳は、どす黒い澱んだ光を放っているように思えた。
「は、早く出て行けよっ!」
「そんなに恥ずかしがらなくてもいいじゃない。そうね……小学校を卒業するまで一緒に入ってたじゃないの。あの頃は短いチン毛が可愛らしく生え始めていた頃だったわね。私の裸を見て、チンポが勃起し始めたのもあの頃ね。お母さん、ちょっと恥ずかしかったけど芳郎が大人になっていく感じがして嬉しかったわ」
 目を瞑り、顎に右手の人差し指を当てる那津子の素振りを見たは彼は、思い出そうとしていると言うよりも、記憶を無理やり引きずり出そうとしている風に見えた。
「わ、わざわざ昔の話をするなよっ。もういいから出て行けってっ!」
 芳郎は湯船の中で股間を隠しながら、バスルームに共振するほど大きな声で荒げた。
「今日はね、芳郎と一緒に色々な事がしたいのよ。分かるかしら、母が子を想う気持ちが」
「分かるわけねぇだろ。何だよ今日はっ。いい加減にしてくれよ」
「そんなに怒らなくてもいいじゃない。折角、立派になった息子のチンポを見てあげようと思っているのに」
 那津子は湯船の中で隠す彼の股間をしげしげと眺めた。
「み、見るなっ。気持ち悪い」
「何言ってるの、母親に向かって気持ち悪いなんて。相変わらずバカな息子なんだから。これだから困っちゃうのよねぇ〜」
 呆れた風に顔をしかめる母に、芳郎は耳が痛くなるほどの大声で激怒した。
「五月蝿いっ、黙れよっ!」
 片手で湯船の水面を叩き、那津子に湯を掛けた彼は、股間を隠しながら脱衣所を後にした。
「もう。折角、親子水入らずで楽しもうと思ったのに。へへ、水入らずでもお湯には入るけど。さてと、綺麗に体を洗った後は、芳郎チャンに大人の相手をしてもらおうかしらね」
 湯船に浸かった那津子は、軽くなった胸に両手を沿えると、その弾力を楽しむかのように揺らした。
「まだ生理は上がってないし、十分セックスが楽しめる体みたいだ。旦那さんとはもう何年もセックスしてから、感じやすいかもっ。そう考えているだけで、おばさんのアソコが疼いてくる感じがするな。おばさんも結構エロいんだ。寝室でオナニーでもしようかな」
 まだ脱衣所で体を拭いている芳郎に対して、わざと聞えるように独り言を呟いた那津子は湯船から上がると、その熟した体を確かめるように、念入りに洗った。