「先に拝ませてもらったけどさ、水泳部の体ってかなり引き締まっているんだ」
「……見たのか?智代の体を」
「そりゃそうさ。じゃなきゃ、何のために乗り移ったのか分からないじゃないか。いつもなら手も握らせてくれない南條が、俺の思い通りに制服を脱いで、好きなだけ見せてくれるんだから。トイレで裸になってオナニーするの、スリルがあって結構楽しかったよ」

 ブレザーを脱ぎ捨てた智代が、スカートのホックを外しファスナーを下ろすと、重力に従って足元に落ちていった。白いブラウスの裾から見える下着が妙にいやらしく見える。
 俺の様子を伺いながら緩めていた青いリボンを取り去り、ブラウスのボタンを外してゆく。まるで妹が俺に対してストリップをしている様に思えた。

「ほら、妹の体はこんなに成長しました〜」
「…………」
下着姿になって誘惑する
 ブラウスを肌蹴させた後、足元に落とした智代は両手を頭の後ろに回し、腰をくねる様にしながらポーズを取った。引き締まったウェストに細い足。でも、ブラジャーに包まれた胸は思っていたよりも大きかった。

「うらやましいなぁ。こんなに可愛くてスタイルのいい妹がいるなんて。もし俺にこんな妹がいたらどうするだろ?」
「も、もういいだろ。早く服を着ろよ」
「何言ってんの?まだ下着姿になっただけじゃん」
「頼むからそれ以上、妹の体を弄ばないでくれ。十分楽しんだんだろ」
「だ〜か〜ら〜、俺はセックスしてみたいんだって。オナニーよりもセックスの方が気持ちいいに決まってるだろ」
「す、好きな女の子にそういう事をして、お前は何とも思わないのか?」
「むしろ、自分の物になったっていう支配感が沸いてきてウズウズするよ。俺以外の男には触れさせないって。でも、お兄ちゃんは別だからね〜。だって兄妹なんだもん!」

 馬鹿げた口調で話しながらも背中に両手を回し、ブラジャーのホックを外している。ブラジャーなんて着たことがない桃木が何の躊躇いもなくブラジャーを取り去るのは、恐らく智代の記憶を読んでいるからだろう。そう思うと尚更悔しく感じる。
 恥ずかしげもなく胸を披露した智代は、パンティーに手を掛けた。

「お、おいっ!」
「小さいころは風呂でよく見てたんだろ。しっかりと陰毛も生えて、大人の股間になってるぜ!」

 智代の両腕が勢いよく下ろされると、パンティがスルスルと足を伝い下りていった。

「なっ……」
「へへ。何年ぶりかなぁ、お兄ちゃんに裸を見せるのは。私の体はどうかしらん?」
裸になって兄に迫る
 まだ黒ずんでいない乳首。そして薄っすらと生えた陰毛。
 妹の智代が俺に全てをさらけ出していた。女の子から女性へと成長を続ける智代の体は、男性を十分に受け入れられる体格になっていると思う。

「大好きなおにいちゃんにマジマジと見られたら、下半身が火照ってくるだろ。やっぱり妹といっても女だもんな。興味ないほうがおかしいって事か」
「ば、馬鹿な事を言うな!妹に欲情するはずないだろっ」
「誰も欲情しているなんて言ってないのに。……っていうか、勃起してるだろ。短パンが随分と盛り上がっているようだけど」

 不覚だった。理性の中では否定しているものの、体は無条件に反応してしまっていた。俺は、大きく膨らんでしまった黒い短パンの股間を両手で隠した。

「今更隠したって遅いって。何だかんだ言っても、妹と犯りたいんだろ?」
「ち、違うっ。俺はそんな事、一つも思っていないっ」
「そんなにチンポを大きくさせていても?それはおかしいんじゃないか」
「だ、黙れっ!」
「妹に手コキされたりフェラチオされたり。一度やっちゃえば抵抗感も無くなるんじゃない?」
「お、俺は絶対に嫌だっ。智代がそんな事をする姿なんて見たくないっ!」

 耐えられなくなった俺は、思わず部屋を飛び出して一階のリビングへと駆け下りた。
 何度も深呼吸し、気持ちを落ち着ける。

「はぁ、ふぅ、ふぅ〜。くそっ!どうすればいいんだ。俺、このまま智代と……」

 ソファーに座り、頭を抱えて一分も経たない間に階段を下りる音が聞えた。
 桃木が智代の体を操り、一階に下りて来たんだ。

「それじゃ、ちょっと男を誘ってくるよ」
「えっ!?」

 慌てて立ち上がり玄関に駆け寄ると、智代が裸のまま靴を履いているところだった。
乗っ取られた妹と玄関で

「なっ!ま、待てよっ」
「はぁ?」
「何考えてるんだっ。そんな姿で表に出たら……」
「別にいいじゃん。あんたが相手してくれないなら適当な男を捕まえるだけだから。このまま裸で外に出たら、皆どう思うだろうなぁ」
「や、やめろっ!絶対に出るなっ」
「あれ?それじゃあ、あんたが相手をしてくれるのか?」
「そ、それは……」
「選択権をやるよ。その代わり拒否権は無いからな」
「くっ……」

 大事な妹が見知らぬ男の手に掛かるなんてあり得ない。
 そんな事なら兄の俺が――。

「答え、出てるんだろ。俺はあんたの部屋に戻ってるから、気持ちが整理できたらシャワーを浴びて戻ってきてくれよ。もちろん裸でな。まだ両親は帰ってくる時間じゃない事は南條の記憶から分かってるんだ」
「……守れよ」
「何を?」
「一度だけだ。一度だけやったら絶対に智代の体に手を出すな」
「……それは俺の勝手だろ?明日の昼間では体を離れられないんだから」
「妹の体に入られているだけで非常に不愉快なんだ。これ以上は望まないでくれ」
「それは一度セックスしてから考えるよ。十分満足したら何もしないかもしれない……とだけ言っておくよ。あんたのテク次第って事で」
「何てやつだ……。元の体に戻ったら、絶対にぶっ飛ばしてやるからな」
「まあ、誰も俺が南條の体に乗り移っていたなんて思わないだろうから、いきなり殴られる俺は被害者って事になるだけだな。慰謝料をたんまり貰って、殴られた事をネタに南條と付き合うってのもいいか」
「くっ……」

 妹の体じゃなかったら――。
 俺の大事な妹の体じゃなかったら――。
 俺は悔しさの詰まった拳をどこにも撃つことが出来なかった。

「そんなに怒るなって。たかが一日じゃないか。俺と一緒にもっと気楽に楽しんでくれよ。じゃあ先に部屋に戻ってるからな。早く来てね、お兄ちゃん!」
「……く、くそ〜っ!」

 湧き上がる感情を抑え切れなかった俺は、階段を駆け上がる智代の背中に思い切り叫んだ――。