ちょっと寄り道して書き始めました……が、すぐに終わりますw

姉1

 僕が中学に入ってからは、一度も入ったことが無かった姉貴の部屋。
 あまり変わっていないけど、新鮮な感じがする。
 そして、僕の目の前には今年高校に入学した姉貴が制服姿で恥ずかしそうに立っていた。
 正確に言えば、姉貴が姿見の前で恥ずかしそうに立っている。
 僕が見詰めると、姉貴も同じように見詰め返してくる。
 無言でじっと見詰められると、恥ずかしくて俯いてしまう。
 でも僕が俯くと姉貴も同じように俯いた。
「あ、姉貴……」
 僕が呟いたはずなのに、姿見に映る姉貴が呟く。
 淡い緑の長い髪に、茶色いセーラー服姿。
 いつも元気一杯で話しかけてくる姉貴なのに、今はずっと恥ずかしそうに僕を見ていた。
「僕ってほんとに……」
 姉貴がまた呟く。
 大きく深呼吸をすると、姿見に映る姉貴も深呼吸した。
 僕の真似をするように。
「信じられない……。姉貴に乗り移れるなんて」

 ――姿見を前にして五分ほど。
 ずっと疑っていた。姉貴が僕の真似をして立っているのではないのかと。
 でも、僕がしゃべると姉貴は全く同じタイミングで口を開き、何も言わずに拳を作ると、まるで僕のすることが予知出来るかのように瞬時に拳を作った。
 もはや疑う余地はない。僕は姉貴の体に入り込んでいるんだ――。


 中学から帰ってきて三十分ほど。
 姉貴がいつもより早く帰ってきた。
「姉貴……。き、今日は早かったんだ」
「うんっ!部活が休みだったからねぇ。拍子抜けしたけど、たまにはこんな日もあるよっ。う〜んっ!ひっさし振りにゆっくりと出来る〜っ」
 そんな姉貴が部屋に入るのを確認すると、ネットで買った「PPZ−4086」という薬を飲んで幽体離脱した。
 フワフワと浮かぶ体で姉貴の部屋に忍び込むと、姉貴はまだセーラー服姿でベッドに座っているところだった。
 僕が部屋に入っていることに気付いていない姉貴は、鼻歌を歌いながら鞄に入っていたノートを開き、授業中に書いた内容を確認している。
 不安に思いながらも、僕は思い切って姉貴の背中に飛び込んだ。
「ひっ……」
 体の中に入り込んだ瞬間、姉貴は短い叫び声を上げた。
 その後はよく覚えていない。
 気がつけば、僕はベッドに横たわっていた。
 ゆっくりと上半身を起こすと、目の前に淡い緑の髪が――そしてセーラー服が見えた。