加賀と兎島1






「今日はお前の誕生日なんだろ」
「だから俺たちで祝ってやろうと思ってさ」

――信じられない。

クラスメイトの加賀さんに「手伝って欲しいの」と言われて家を訪れると、彼女の部屋には生徒会長の兎島さんがいた。
二人して俺の誕生日を祝ってくれると言う。
ボーイッシュな雰囲気が好きな俺は、陸上部に入っている加賀さんの事が好きだった。
ショートカットでスレンダーな体つき。
胸はあまり無いけど、俺自身、巨乳好きじゃないので全く問題ない。
というか、寧ろこの位の方がいい。
そして清楚な雰囲気を漂わせる兎島さん。
いつも手入れを欠かしていないであろう緑の長い髪が綺麗だ。
俺には高嶺の花だけど、一度だけ会話をしたことがある。
そんな二人が俺の誕生日を祝ってくれるなんて。
いや、彼女達が祝ってくれるわけではない。
それは――。

「お前が好きな加賀と生徒会長の兎島に乗り移ってやったんだ。いつも宿題写させてもらってる御礼さ」
「ちょ、ちょっと待ってくれよ。い、一体どういう事だよ」
「どういう事って、見りゃ分かるだろ」
「みりゃ分かるって言われても……」
「俺が啓吾さ」
「啓吾?」

加賀さんは笑いながら自分を指差していた。

「け、啓吾って……俺のツレの?」
「他に誰がいるんだよ。そしてこっちが明人さ」
「あ、明人!?」
「ああ。お前、兎島さんともっと話したいって言ってただろ。だから俺は生徒会長の兎島さんの体を失敬してきたんだ」
「そ、そんな事言われても……し、信じられないって」
「そうだろうな。じゃあちょっとだけ見せてやるよ」
二人が顔を見合わせた後、加賀さんと兎島さんの後ろにぼんやりと人影のようなモノが見えてきた。
それが次第に人の形となり――。

加賀と兎島2






「け、啓吾!?それに……明人っ!」
加賀さんと兎島さんの後ろで、半透明の二人が笑っている。
幽霊のように揺らぐ二人の姿に、俺は腰が抜けそうだった。
その後、また彼女達の体に溶け込むように入ってゆく。
「なっ!俺たちだって言うことが分かっただろ。今、幽体になって加賀さんの体に入り込んでいるんだ」
「そ、そんな事が……出来るのか?」
「ああ、PPZ−4086って薬を使うとな」
今度は兎島さんが笑いながら答えた。
他人の体に入り込んで操れるなんて。
何処から見ても加賀さんと兎島さんだ。
まだ信じられない。
「それにしても、毎回思うよな。スカートは下半身が頼りないって」
「だよな。でも自分でパンチラとか楽しめるのがいいよ。鏡の前でわざと裾を上げてチラリと見せるのって興奮しないか?」
「するする!ブラウスのボタンを二つくらい外して胸の谷間を見るのもサイコーだよな」
「ああ、裸よりもそそられるものがあるな」
俺の目の前であり得ない会話をする二人。
加賀さんが、そしてあの生徒会長が下品な言葉を口にするなんて。
明らかに本人ではないことが伺えた。
「なあ卓男。こんな会話をしても、俺たちだと思わないか?」
「いや、思う」
「だろ。今日はこの加賀さんと兎島さんの体で楽しませてやるよ」
「何をしてほしい?手コキか?それともすぐにエッチでも構わないぜ」
「なっ……。ま、待てよ。そんな事したらヤバイだろ」
「大丈夫だって。俺たちが乗り移っている間は記憶が無いし、この二人って……」
加賀さんが俺に近づいて、耳元で囁いた。
「実は……処女じゃないんだ」
「う、嘘だっ!」
「ほんとだって。少なくても、膜は無かった」
「ま、膜って……し、調べたのか?」
「そりゃそうだろ。さすがに処女じゃエッチするのはヤバイからな」
「でも驚いたよな。まさか兎島さんが処女じゃないなんて」
「ああ。指を入れたら何の抵抗も無く奥まで入るんだから。しかも結構気持ちいいし。清楚な感じだけど、実は裏で遊びまわってたりして。ははは」
兎島さんが目の前に垂れた髪を後ろに掻き上げながら下品に笑った。
しかしショックだ。
まさか加賀さんも兎島さんも男性の経験があるなんて。
でも、もしかしたら運動して膜が破れたのかもしれない。
俺は二人のイメージを崩したくなかったから、頭の中でそう言う事にした。
「もし卓男がして欲しいって言うなら、加賀さんの口を使ってやってもいいぜ。ただし、綺麗に洗ってきたら……だけどな」
「俺もそれなら構わないけど。この兎島さんの口もなかなか言いと思うぜ」
兎島さんがほっそりとした白い指を柔らかそうな唇で咥え、舌を使って舐めている。
なんて悩殺的な仕草なんだろう。
俺はその仕草を見ただけで激しく勃起してしまった。
「まあ、とりあえず体を洗って来いよ。何なら一緒にバスルームに入ってやってもいいんだぜ」
「マ、マジで!?……い、いや。やっぱり遠慮しとくよ。幾ら二人が乗り移っていると言っても恥ずかしすぎるから」
「何遠慮してんだよ。どっちみちエッチするんだから関係ないだろ」
「それだけは勘弁してくれよ。マジで恥ずかしいんだ」
「じゃあ一人で洗って来いよ。廊下を歩いて右側にあるから。ちなみに俺たちはもう体を洗ってるんだ。二人でな!」
「ああ。綺麗だぜ、この体。見せてやるから早く洗って来いよ」
「あ、ああ」
何もしていないのに射精してしまいそうだ。
兎に角、俺は部屋から出ると、ドキドキが治まらない心臓でバスルームに向かい、加賀さんの家のシャワーを勝手に使って体を洗った。