「規子……」
久しぶりに愛し合い、満足げな表情で目を閉じている規子に優しく声を掛けた猪田は、体が冷えるといけないと思って、肌蹴た掛け布団をかけてやった。
無言で猪田の胸に顔を摺り寄せる規子。
その仕草が初々しく感じた。
膣の中で射精した肉棒が徐々に萎えてきたが、その生温かい場所がお気に入りなのか、居心地が良さそうに入り込んでいる。
「んん……」
そして、愛し合った余韻をずっと感じていたいのか、規子も猪田に体を預けたままだった。
「久しぶりのセックスもいいもんだな」
「……そうね。セックスで愛情が確かめられるから」
「ああ。結婚する前に付き合っていたことを思い出すよ」
「どんなこと?」
「お前がモデルの仕事をしていて、夜まで終わるのをずっと待っていた。終わってからも俺みたいに他の男達からの誘いが多かったよな」
「…………」
「必死でアピールして、何とかお前の心を射止めることが出来た。あの時はとても嬉しかったよ」
「……そう」
「ああ、本当に嬉しかった。そして結婚し、由菜を授かった」
「そんなに嬉しかったの?」
「そりゃそうさ。俺にとっては最高の人生だ。規子は……どうだ?」
「……私?ねえあなた。私の事、まだ愛してくれてる?」
「当たり前だろ」
「こんなに歳を取ったけど、まだ愛してくれるの?」
「……悪かったな。不安な思いをさせて。最近俺の言動がおかしいから気になるんだろ?」
「……っていうか、そんなに奥さんがいいのなら奥さんの体を奪って子供を育てます」
「えっ……えっ!?」
規子は猪田の胸に両手を重ね、その上に顎を乗せて猪田の顔をじっと眺めた。
今までの表情とは雰囲気が違う。そんな感じだった。
「課長にとってはそれが一番幸せかもしれませんね。この体をまだ愛しているんでしょ。だったら私、子供を生んだ後は奥さんの体で過ごすことにしますよ」
「な、何を言って……い、いつから規子に!?」
「いつからって……最初からですよ。課長が起きる前から奥さんの体に乗り移っていましたよ。課長とセックスがしたいと思って、フェラチオで起こそうとしたんです。奥さんの口、気持ちよかったでしょ。私、フェラチオは結構得意なんです」
「そ、そんな……」
「私だなんて、全然分からなかったでしょ。大丈夫です。私、奥さんに成りすませる自信があります。お嬢さんにだって、上手くごまかせますよ」
「ば、馬鹿な事をっ。由菜の次は規子になって子供を育てるだなんて」
「いいじゃないですか。最近奥さんとセックスしていなかったんでしょ。少し話を誘導すれば、課長は何でも教えてくれるんですね。私が奥さんになって、積極的にセックスしてあげますよ。そんな奥さんの方が好きなんじゃないんですか?それに奥さんの体、すごく気持ちよかったです」
「や、やめないか!もう規子の体から出て行ってくれ」
「奥さんが寝ているときに乗り移ったから、私が体から抜け出ても遅くに目が覚めたと思うだけです。今なら気兼ねなく奥さんの体を使えるんですよ。折角だからこの体でもう少し課長と楽しませてください。いいでしょ?」
「だ、だめだっ!屋河と分かっているのに、どうしてセックスできるんだっ」
「だって、まだ奥さんの膣に課長のオチンチンが入ったままですよ。それに、こうやって話している間にも大きくなっています。私が乗り移っていると分かったら興奮したんじゃないですか?」
「何を訳の分からないことを。早く離れてくれっ」
「いやです。もっと気持ちよくさせてください……んっ、んんっ、んっ」
「う、動くなよっ。おいっ」
「あっ、あっ、あなたっ!また私の中で大きくなって……す、すごいっ」
「や、やめろ……」
完全に志乃理のペースに巻き込まれてしまった猪田は、また規子の真似をして腰を振る志乃理を完全に否定することが出来なかった。
言葉では拒否しても、その行動を止められない。
「あっ、あ、あ、あんっ。そんな事言って、あなたも気持ちいいんでしょ。素直になって私とセックスして」
「お、屋河っ。頼むから……はあ、はぁ」
「もうその名前は言わないで。規子と呼んで。あなたと私は夫婦なのよ。んっ、んっ。あんっ!」
「お、屋河……ううっ」
「いいのよあなた、もっと感じても。私が全て受け入れてあげる。んっ……だから、もっと私を気持ちよくさせてっ!」
「はぁ、はぁ……うっ、くうっ」
肉棒を膣に入れたまま上半身を起こした規子がベッドにしゃがみ、そのまま大きなストロークで腰を上下に振り始める。
二十年近く付き添ってきた猪田とのセックスで、くすんだ乳首が激しく上下に揺れている。規子は息を乱しながら一心不乱に快感を求めているかのようだった。
こんなに乱れる規子を見たことが無い猪田は頗る興奮すると共に、必死に腰を振っているのは自分の部下である屋河志乃理である事を弥が上にも認識させられたのだった――。