二人を乗せたワンボックスカーは、スタジオのある建物の裏から駐車場へと侵入した。どうやら出演時間が押し迫っているようだ。車から降りた二人は、マネージャーの田中に連れられて控え室へと向かう。履き慣れないブーツを履かされ、足を挫きそうになりながらついて行く勉。

「あまり時間が無いな。二人とも疲れただろうけど、あと十分でスタジオに入らなければならないんだ。悪いが休憩は番組が終わった後と言う事で。無理させてごめんな」

 田中が申し訳無さそうに勉達に話す。別に疲れてなんかいない勉は、
「大丈夫よ。任せといて」と言って、笑顔を見せた。

「そうか、じゃあ心配はしないよ。俺は二人が出演している間に打ち合わせをしなければならないからスタジオには行けないけど、頑張れ!」

 田中はそう言い残し、控え室から出て行った。白く明るい八畳ほどの控え室。足元の床は綺麗に磨かれていて、その絨毯の上にはテーブルや椅子が置いてある。奥にはゆったりと座れる横長のソファーがあり、壁には身だしなみを整えるための鏡が埋め込まれ、化粧台もあった。
 勉は何気なく鏡の前まで歩いて行くと、美穂の全身を映してみた。黒で統一された衣装を身に纏い、大人びた雰囲気を漂わしている美穂の姿。足を揃えて片手を腰に当ててみる。

「どう?私。ねえ、どう思う?香奈」

勉は鏡の中でポーズを取っている美穂を見ながら、香奈に問い掛けた。

「何が?」

 香奈のつれない返事が返ってくる。

「何がって……私の身体よ。セクシーに見えるでしょ?」
「あははっ。何言い出すのよ美穂。面白〜い」

 香奈は勉の言葉に笑い始めた。普段では言わない『セクシー』などと言う言葉を平気で話した事が面白かったようだ。

「どうして笑うのよ。笑うところじゃないでしょ」

 美穂の口調を真似するように話した勉は、椅子に座ってケラケラと笑っている香奈の後ろに立ち止まった。
 そして、左手を香奈の肩に乗せると、
「そんなに笑うならこうよっ!」
と言って、右手で後ろから香奈の胸をムギュッと掴んだのだ。それも黒いビニール製のTシャツの中に手を滑らせ、ブラジャーの中にある胸を直接。

「あんっ!やだっ」

 笑っていた香奈がビックリしてTシャツの中に侵入した勉の右手首を掴んだ。

「笑った香奈が悪いんだよ〜っ」

 嬉しそうに香奈の胸を揉む。後ろから覗き込む勉の目には、美穂の手が香奈の胸を直接揉んでいるところが映っていた。勉の好きなアイドル二人が、こうやって危ない行為を繰り広げている。それは信じられないシーン。そのシーンを勉が作り出しているのだ。

「もうっ、手を放してよっ。あっ」
「じゃあ笑わない?」
「やっ……あんっ!わ、笑わないから」
「そう。じゃあ放してあげる」

 勉は身体を小さく丸めて抵抗していた香奈のTシャツから手を抜いた。香奈の硬くなっていた乳首の感触が指に残っている。

「冗談しすぎよ。もう……」

 膨れっ面をした香奈が、少し息を乱しながら服の乱れを整える。

「ごめんね、香奈」

 悪いなんて全然思っていない勉は、とりあえず美穂の顔で可愛く謝ってみせた。
 その後、タイミングよくドアをノックする音がして、男性スタッフが入って来た。

「ツートップさん、そろそろ始まりますからスタジオ入りしてください」
「はい。分かりました」

 勉はにっこりと笑いながらスタッフに答えると、「それじゃあ香奈、行こっ」と言って、
スタッフの後に着いて行ったのだった。

「どうしたのかなぁ。今日の美穂……」

 いつもと雰囲気が違うような気がした香奈。鏡を見て服の乱れがない事を確かめると、先に出て行った勉を追いかけた――。