パンティの中に手を入れたまま、呆然と鏡を見つめる。上半身裸で、涎を垂らして勉の目を見つめる美穂。肩で息をしているのがよく分かる。心臓がドクドクと脈打ち、顔も熱い。
「う、はぁ……はぁ〜、はぁ」

 美穂の肺で呼吸し、美穂の少し掠れてしまった声で吐息を漏らす。彼女の身体で初めて女性としての快感を知った勉は、しばらく余韻を楽しんだ後、身体を捻り背もたれを掴みながら立ち上がった。座っていた椅子の生地がすっかり濡れてしまっている。

「美穂ちゃんの身体ってこんなに濡れるんだ。すごいな……」

 椅子に付いたシミを見ながら呟く。アイドルとはいえ、ちゃんとやる事はやっているんだと思った勉は、まだ余韻から覚めやらぬ身体に、冷たくなったパンティを穿いた。そしてパジャマのズボンを脱ぎ捨て、ブラジャーも付けないままパンティ一枚で部屋の中を物色し始めたのだ。

 歩くたびに揺れる二つの胸。その胸を右手で揉みながらベッドに近づく。

「昨日音楽番組に出演して、そのままこのホテルに泊まったのかな。あの時の衣装とか持ち込んでいたらいいのに」

 そう思いながら、ベッドの横に置いてあったボストンバックのファスナーを開け、中を覗きこんでみた。バックの中には、化粧品や新しい下着などしか見当たらず、服は全く入っていなかった。

「無いか。じゃあこっちは……」

 今度は部屋に備え付けてあるクローゼットの扉を開ける。すると、昨日美穂が着ていたであろう私服がハンガーに掛けてあった。赤と白の、厚手の生地で出来たボーダーTシャツ。Tシャツと言っても長袖だが。そして少し深い緑色のイージーパンツ。今時の女の子が着る服装で、お金をかけている様子は全く無い。アイドルとして結構稼いでいると思っていた勉は、美穂の私服を見て、少し親近感を覚えた。

「へぇ。アイドルでも普通の服を着るんだ。もっと派手なブランド物の服を着ていると思ってたよ」

 ハンガーから服を外すと、絨毯の上にそっと置いた。

「さて、普段の美穂ちゃんを見せてもらおうか」

 先ほど身につけていたブラジャーを手にとり、後ろに付いているホックを外す。そして肩紐を通したあと、両手を後ろに回して不器用にホックを止めようとした。しかし、思ったように手が動かず、ホックを止める事が出来ない。

「む、難しいな。これ……」

 鏡台の鏡に後ろ姿を映し、後ろに顔を向けながらホックを止める。手の動きが左右逆なので難しかったがホックの位置が見えるので何とか止める事が出来た。美穂の身体を鏡に映しながら、ブラジャーの中に胸をしまう。

「よし、次は……っと」

 勉はボーダーTシャツを手に取ると、それを頭から被り両腕を袖に通した。少し大きめのボーダーTシャツは美穂の身体を小さく見せる。しかし、二つの胸はボーダーTシャツの生地をしっかりと持ち上げ、その存在を強調しているようだった。
 上半身を後ろに反り、美穂の両手をその胸に宛がう。ふっくらとした胸の感触は、パジャマを着ていた時とはまた違う柔らかさを手のひらに伝えていた。

「私服もなかなかいいじゃないか。美穂ちゃん、次はズボンだよ」

 勉はしゃがんでイージーパンツを手に取ると、片足ずつパンツに通して腰まで引き上げた。身体の線は強調されないが、活発な女の子らしい姿が完成する。
 その私服姿をもう一度鏡に映した勉。普段の彼女はこういう服装をしているのだと想像すると、彼女の秘密をまた一つ知ったという優越感を得る事が出来るのだ。

「普段着の姿も可愛いよ、美穂ちゃん。俺がこの姿で外を歩いたらどうなるかな。すぐに美穂ちゃんだってバレるだろうか」

 すっかり普段の彼女になりすました勉は、ベッドの横に置いてあったボストンバックから小さな白い靴下を取り出すと、ベッドに座って穿き始めた。ちょうどその時、コンコンとドアを叩く音がした。

「あ……」

 勉の手が一瞬止まった。誰かがこの部屋に入ってこようとしているのだ。
 頭の中で色々な事を想像する。緊張して顔がこわばってしまった勉は、とにかくこのままではまずいと考えた。

「ど、どこかに隠れた方がいいか!」

 ベッドの下に潜り込もうとした勉。だが、ドアの向こうから聞こえた声に勉は身体の動きを止めた。

「ねえ、もう用意出来た?」

ん?この声は……

「美穂、聞こえてる?もしかしてまだ寝てるの?」

 聞き覚えのある女性の声。

 あ、この声……もしかして香奈ちゃん?
 多分……いや、きっとそうだ。

 勉はベッドの下に潜り込むのを止めた。そしてドアの前まで歩いていくと、ノブを掴んでゆっくりとドアを開けた。
 ドアの向こうには、同じ目線で立っている香奈がいた。『ツートップ』としてペアを組んでいる同い年のアイドル、稲津香奈が――。