「え〜、どうして先に食べちゃったの?折角買ってきたのに」
「う、うん。優二、急用が出来ちゃって」
「残念だわぁ。私もお祝いしてあげたかったのに」
「ごめんねお母さん」
「仕方ないわね……」
「う〜……」
「あら啓子。帰っていたの?」

二階から足音が聞こえて、姉の啓子が現れた。

「帰っていたというか、私、今日は何をしてたの?」
「何をしてたって……どういうこと?」
「私にもさっぱり分からないの。確か朝、服を着替えてCDを借りに行こうとして……それから記憶がないのよねぇ」
「だ、大丈夫?」
「さあ。私、もしかして痴呆症?」
「ね、ねえお母さん。それよりもケーキ、一つだけなの?」
「え、ううん。折角だからと思って四つ買ってきたわ」
「じゃあ食べようよ。啓子姉も一緒に」
「ケーキ?どうしてケーキなんか買ってきたの?」
「優二君の誕生日だったのよ。それでね、さっきまでいたんだけど……啓子、ずっと部屋にいたの?」
「分からないわ。何がどうなっているのか」
「それにその服、今日亜樹が借りてた服じゃないの?」
「え?亜樹が?」
「な、何言ってるのよお母さん。私が啓子姉の服を着れるはず無いじゃないの」
「だってさっきまでその服を……」
「いいからいいから。早くケーキを食べようよ」

亜樹はどう考えても辻褄の合わない会話を制すと、無理矢理話題を変えて二人にケーキを食べさせた。
その額に冷や汗を掻きながら。






「大変だったんだよ。あの後」
「だろうな。何となく想像できるよ」
「やっぱり無茶しちゃだめだね」
「だな。でも、俺にとっては面白い誕生日だったよ。ありがとな」
「うん」
「それにしてもすごいクリームだよな。帰ってから改めて思ったよ」
「でしょ!私も最初は信じられなかったけどね」
「もし俺がお姉さんの体にくっついたら、亜樹みたいにピアノが弾けたのかな?」
「たぶんね。ほんとに体が覚えてるんだもん」
「ふ〜ん、そっか……それって面白いなぁ」
「でも、もう残ってないの」
「またもらえるのか?」
「ううん、もうだめみたい……っていうか、次は二百万円払ったら売ってやるよだって」
「二百万円か。ぼったくりだな」
「あれはお試しのクリームだって言われちゃった。でも、買う人がいるんだって。二百万円でも」
「へぇ〜。そんな大金払って手に入れるなんて……何するんだろ」
「さあ?私には分からないよ」

学校の昼休み。
二人はグランドの隅にある木陰で座っていた。
世の中、非現実的な事もあるんだ……。
そんな事を思いながら。

誕生日のプレゼント……おわり




あとがき
珍しくエッチなシーンが無かったのですが、まあたまにはいいかなぁと。
久しぶりにあの設定で書いたのですが、やっぱり個人的に好きですねぇw