会社に着いた私は、いつものように女子更衣室に入ると制服に着替え始めた。
青いベストと膝小僧より少し上までタイトスカート。
白いブラウスは今のままでよいが、私が三つボタンのスーツを脱いでハンガーに掛けたとたん――

「あっ」

ブラジャーが動いた。
与一が形を変えながら、ブラウスのボタンとボタンの間からすり抜けてきた。
そして足元に落ちたときには、今着ているブラウスとまったく同じ物に変身したのだ。

「ちょ、ちょっと。それは嫌よ」

急にひんやりとした胸元を抑えながら、私は落ちているブラウスに話し掛けた。
でも、ブラウスは勝手に動き出して私の足をよじ登ってくる。

「嫌だって言ってるのに」

お構いなしだ。
裾の部分が手の形に変化し、私が着ているブラウスのボタンを外し始める。
何を言っても聞かないところが、わがままというか、まだ子供っぽいというか。

無理矢理ブラウスを脱がされた私の上半身を、与一が変身したブラウスが包み込む。
先ほどは胸だけが生暖かかったのだが、今度は上半身全体が生暖かい。
仕方なしに、ブラウスの上にベストを着込み、タイトスカートに穿きなおした。
ノーブラで、しかも与一が変身したブラウスを身にまとっているんだと考えると――

私は一つため息をつくと、オフィスへと歩いた。


大きな窓が並んだ明るいオフィス。
5つの机が並んで向かい合い、合計10の机が一かたまりになって並んでいる。
私はその一つの机に座って、ノートパソコンを開いた。
ここが私の作業スペース。
事務処理が主な仕事なので、何か頼まれごとでもない限り一日中この場所を動かない。
左右には同僚の女性。
目の前の机には先輩の女性が座っていた。
私語は慎みつつ、それでもたまに小声で話す。
隣にいるのに、メールで会話することもしばしば。
それが私の日常だった。

上半身に生暖かさを感じながらキーボードを打つ。
ブラウスに変身した与一に気づく人はなく、皆、パソコンの画面を見ながら作業していた。
与一もしばらくは何もしてこなかったので、このまま何事もなく終われるかもしれないなぁ――なんて思っていたが、もちろんそんなはずはない訳で。

「ぅっ!?」

私はビクンと体を震わせて背筋を伸ばした。
ブラウスの生地が背中を擦ったのだ。
まるで、人差し指が背骨を上から下になでるように。
ざわっと鳥肌が立つ。
今度は、ベストの中で二つの手のひらが背中全体を擦っている。
その手のひらの感覚は、肩に移動したり、腰に移動したりした。
ブラウスの生地がひとりでに動くなんてありえない。この異様な光景は、半袖のベストが他人から見えなくしていた。

私は最初こそびっくりしたものの、その後は平静を装いつつキーボードを打ち続けた。
入力ミスはできないので、パソコンの画面に集中する。

手のひらは、腰からお腹に移動すると、そのまま円を描くように撫でた。
お腹の皮膚が、ブラウスの生地に撫でられて――
その後、ゆっくりと上に移動した。

「…………」

私はキーボードを打っていた指を止めた。
それとなく周りを見渡すと、皆、画面を見ていたり電話の対応をしている。
だから、こうやってノーブラの胸をブラウスの生地に揉まれているなんて事が分かる人はいなかった。
乳房を揺らされると、カサカサとブラウスの生地が擦れる音が。
そして、ベストが少し動いていた。
私は両脇を閉めた状態で机にひじを突き、両手を組んで顎を乗せて考えているフリをした。他人に見られるのは恥ずかしいし、こんな状況でキーボードを打っていたら間違えるかもしれないから。
腕で左右を隠していれば、少なくても同僚の女性からは分からない。
それに、目の前にいる先輩もノートPCの画面が邪魔をして私の状況は分からないだろう。
それが分かっているのか、与一は余計に大胆な動きをはじめた。
勃起した乳首を摘み、そのまま引っ張っている。
ベストが前に盛り上がり、また元通りに戻ってゆく。
それが何度か繰り返されると、私の口が自然と半開きになった。
こんな風に乳首を弄られたら、すごく気持ちよくなってしまう。
更に、ブラウスのボタンが上から一つずつ外れ、生地が左右に開いて――
ベストの胸元から、私の胸の谷間がとてもよく見えてしまった。
こんな姿を誰かに見られたら。

急激な羞恥心の高まり。
そして快感。

そんなに乳首ばかり弄らないで――
そんなにしたら……ダ、ダメなのに――
呼吸が乱れ、徐々に気が遠くなっていくように感じた。



だが、画面に現れたメール受信メッセージが私を現実に引き戻した。
あわててマウスでメッセージをクリックして内容を読んでみると、隣に座っている同僚の女性、浩子からだった。
【どうしたの?何か悩んでる?もしかして恋煩いとか。なんか耳、赤いよ(^^】
私が浩子を見ると、浩子はクスッと笑い返してきた。
いや、そうじゃなくて、今、あなたの目の前で愛撫されているのよっ!
とは言えず、
【ちょっとね】
とだけ返信した。
仕事をしなければならない。
私は右手でマウスを握りつつ、左手でベストから見えているボタンをそれとなく留めた。与一はそれに抵抗することはなかったが、ずっと胸を弄って楽しんでいた。

その後、しばらく胸を触っていた与一だが、私が反応を示さないので飽きてきたのか、今度は肩を揉んでみたり二の腕をプルプルと震わせたりした。
たまに脇をくすぐられたりしたが、ぐっと笑いをこらえた。
与一も、私があまりに不自然な行動をとって周りの人たちから変に思われることを望んでいるわけではないだろう。
今はこれ以上、ひどい悪戯はしてこない。
それよりも、乳首を口の中に含んで舌で転がすような快感には、私の理性が少し崩れかけそうだった。
蕩けような気持ちよさ。
会社に来てこんな快感を感じるのって――

そう思っているうちに、ブラウスの動きが止まった。
疲れたのか、5分経っても10分経っても何もしてこない。
もしかして、眠ってしまったのだろうか?
それなら都合が良い。
もうすぐ昼食の時間だし、一度更衣室に行って与一を脱ぎ、元のブラウスに着替えよう。私は席を立つと、皆より一足先に更衣室へ向かった。