「今日はブラジャーな気分なんだよな」
「何言ってるのよ。私はそんな気分じゃないの」
「そんな事言うなよ。お前だって気持ちいいだろ」
「そういう問題じゃないでしょ。この前も与一のせいで半日ノーブラだったんだから」
「今日は大丈夫だって」
「大学はどうするのよ」
「サボる」
「そんなんじゃまともな会社に就職できないわよ」
「構わないさ。俺、敬菜のヒモになるから」
「何を訳分かんないこと言ってるのよ」
「駄目?」
「駄目に決まってるわ。私は真面目な人と付き合いたいのよ」
「じゃあ俺がいなくなっても寂しくないの?」
「……さあね」

私は与一との話を一旦やめると、パジャマ姿で小さな洗面所に向かい、髪を整え化粧を施した。OLの私にとっては大学生活を満喫している与一がうらやましい。
今日も私は会社に出勤。
そして与一は大学をサボるといっている。

2ヶ月くらい前にナンパされ、付き合うようになった彼。
今では私のワンルームマンションに入り浸り状態。
一応バイトしていて家賃を幾らか入れてくれているからココにおいてあげている。
年下で可愛いし、性格も憎めないところがあるから。
更に言うと、与一には本当に不思議な力――というか、能力があった。



私が洗面所から部屋に戻ると、与一の姿はなかった。

「……そんな気分じゃないって言ってるでしょ」

私はテーブルに綺麗に畳まれて置いてあったおしゃれなピンクのブラジャーに向かって話しかけた。
もちろん独り言を言ったわけじゃない。
それに、こんなおしゃれなブラジャーを私が持っているはずもない。
このブラジャーの正体は――
与一だった。


与一の能力は、物に変身できること。
最初は信じられなかったけど、今では私生活の中で当たり前となっている。
便利なときもあるけれど、そうじゃないときの方が多い。

「もう……」

パジャマを脱いで下着姿になった私は、部屋に備え付けてあったクローゼットを開いて、いつもの白いブラウスとダークグレーの三つボタンスーツに、同じ色のパンツを取り出した。
ちらりとテーブルの上を見ると、与一が変身したブラジャーがない。
その代わり、俯くと足元にブラジャーが歩いていた。
妙に生暖かいブラジャーが私の足をよじ登って来る。

「エッチなことばかりしないでよ」

そう言っても、ブラジャーに変身した時点で結果は分かっていた。
それが分かっていながら与一を受け入れている私は――



今つけているブラジャーを外して両腕を少し前に出すと、与一が変身したブラジャーの肩紐が勝手に腕をくぐり、肩へと移動した。
両脇を通り、背中でホックが止まる。
胸がパッドで包まれると、胸全体に生暖かさを感じた。
この生暖かさが結構気持ちよくて、ホッカイロをつけている気分。

今穿いているパンティが白なので、与一のブラジャーと同じくピンクのパンティに穿き替えた後、肌色のパンストを穿いて服を着込んだ。
外見はスーツ姿の私。
でも、私の胸には与一がへばりついている。
いつ、どこで悪戯されるか分からない。

「んっ……」

ほら――もう与一の悪戯が始まった。左の乳首がパッドの裏生地に摘まれた感じ。
私はスーツの上からパシンとブラジャーを叩くと、ショルダーバッグを肩から掛けてマンションを出た。