(こ、この体勢じゃ犯人の顔もまともに見れないぞ……)

俺は股間の伸びるいやらしい痴漢の手を、ほっそりとした震える手で押しのけようとした。
でも、俺の体――この女子高生の体から発する、あまりにも濃密で官能的な快感に理性がまともに働かない。
我々は痴漢に困っている女性達の中から、捜査に協力してくれるという人たちを募った。
そして、その中でも非常に協力的な女子高生に捜査の意図を話すと、快諾してくれたのだ。
「あのいやらしい痴漢を捕まえてくれるなら」
その思いを深く胸に刻んだ俺は、彼女の体に乗り移り、現行犯逮捕を試みた。
しかし、この痴漢男――『すごい』の一言だった。
それは俺が男であり、女性の快感を知らなかったからかもしれない。
女性ならば不快な思いをしているのだろう。
だが、初めて味わう、男ではありえない快感は――

「あ……ああ……」
「そんなに感じるのかい?じゃあおじさんがもっと気持ちよくしてあげるよ」
「くっ……くそっ……ひうっ!」
「可愛いねぇ。もうこんなにグチョグチョに濡らしてるじゃないか。おじさんの手もぐっしょりだよ。いやらしいなぁ」
「はぁ、はぁ」
(こ、この手が……くそっ!か、体が……き、気持ちよすぎて……手に力が……)

少し離れたところには、同僚が待機している。
あいつに知らせる事が出来れば逮捕できるのに――

「気持ちいいだろ。そろそろおじさんも気持ちよくなりたくなってきたよ。ほら、その可愛い手をおじさんに貸してごらん」
「何を……あっ」
「どうだい?すごく硬くなってるだろ。これ、君のせいだよ」
「や、やめろ……」
「可愛い顔してそんなに粋がらなくてもいいよ。いや、おじさんとしてはその方がそそるんだけどね」
「くうっ」

いつの間にかズボンから出していた肉棒をつかまされた。
そして男は、肉棒を後ろ手で握り締めた俺の手ごとしごき始めた。

「はぁ、はぁ。気持ちいいよ。なんて柔らかい手なんだ。おじさん、すぐにイッちゃいそうだよ」
「な……や、やめろよっ。ううっ」
「しっかり乳首を弄っていてあげるからね。そのまま……ううっ。たまらん」
「いっ……あっ。はぁ……あ……んっ」

(ち、乳首が……ああ……か、体中に電気が走るみたいだ……)

「いい声だよ。ほんとに……くっ、だ、だめだっ」
「だ、出すな……よ……あっ」
「くっ……うっ、うっ……うっ……は、はぁ、はぁ〜」
「…………」

俺の手にべっとりと生暖かい物が付着した。

「はぁ、はぁ。ごめんね、スカートに付いちゃったよ。何ならおじさんが洗ってきてあげるよ。君の穿いているスカート」
「はぁ、はぁ……はぁ」

ちょうど駅に着いたところで、スルリと黄色い制服から男の手が抜ける。

(はぁ、はぁ……や、やられた……折角、女子高生に体を借りてまで捜査したのに……)

俺は半分放心状態になってしまった。
その間に男は電車を降り、何処かに消えてしまったようだ。

「お、おい。大丈夫か?」

人を掻き分けるようにして同僚が歩み寄ってきた。
そして、俺の姿を見て言葉を失っていた。

「……す、すまん。俺……」
「……やられたんだな」
「……あ、ああ」
「どうして知らせなかったんだよ」
「……すまん……」

俺は女性の体が気持ちよすぎて知らせられなかった――なんて事を言えなかった。
また協力してくれる女性は現れるだろうか?
いや、それよりも俺が体を借りたこの女子高生になんて言い訳したらいいんだ。
俺はそんな事をずっと考えていた――

おわり