まだ比較的人通りの多い道。
俺――いや、私は鼓動を早めると、早足から少し駆け足になってブーツをリズミカルに鳴らした。
その少し向こうの角を曲がった先が私のマンション。

「さてと。早速お邪魔するか」

深緑のワンピースのポケットから鍵を取り出し、いつもの様に金属製の扉を開く。
少しだけ軋んだ音がするのもいつもどおりだ。

私はブーツを脱ぐと、入ったすぐの壁にあるスイッチで部屋の明かりをつけ、鼻歌を歌いながら目の前にあるベッドへと歩いた。
もちろん最近流行の男性アイドルの曲。

「よし、とりあえず昨日と同じように……」

一度服を脱ぎ、コインランドリーに持って行こうと思って籠に入れておいたピンクのブラウスと紫のパンティを手に取った。
ブラウスには皺が寄り、パンティは股間のところに薄っすらと黄色いシミが出来ているように見える。
それは私が昨日オナニーして染み込ませてしまった愛液。
愛液の染み込んだパンティを鼻に当ててクンクンと匂うと、まだ私の少し臭い愛液の匂いがした。

「すげぇ〜。ちょっと臭いけどエロくてたまんねぇよ」

ドキドキしながら使用済みパンティに足を通すと、手早くブラウスを身につける。
もちろんボタンは上の三つくらい開いたまま。胸がチラリと見えてセクシー。
ブラジャーをしていないので乳首にブラウスの生地が擦れて――妙に気持ちいい。

「やだなぁ。早速乳首が勃っちゃった。もう興奮してらぁ」

ベッドに座った私は、この体を愛しむ様に抱きしめた。

「あ〜。もうサイコ〜」

二の腕に胸が寄せられて、ブラウスの中で深い谷間を作っているのが見える。
その胸をじっと見つめたあと、私は早速オナニーを始めることにした。
いつもの様にベッドに寝転がり、円を描くようにゆっくりと胸を回し揉みする。

「柔らけぇ〜、これはたまんねぇ。奈々未ちゃんよぉ〜」

私は下品な言葉を使いながら興奮した。
非常に柔らかい胸。
そして、初めて胸を揉まれている感触を味わう。
これが女の体。
それが女の快感。

「はぁ、はぁ。ああっ!胸を揉んでいるだけなのに……どうしてこんなに気持ちいいんだ」

男のそれとは違い、じわじわと快感がたまってゆく感じがする。
特に、勃起した乳首を摘んでこねくり回すとビリビリと体に電気が走る感じがした。
男ではありえない気持ちよさ。
私は喘ぐ自分の声に萌えながら乳首を引っ張りまわして更に女の快感を搾り出した。

男の肉棒がビンビンに勃つのと同じだろうか?
私の下半身がじんわりと熱くなるのを感じた。
そう。触らなくてもクリトリスが充血し始め、皮に包まれたまま触られるのを待っているように思える。
そして、膣が男の肉棒を受け入れるべく、潤滑剤となる愛液を滲ませ始めているのだ。

「んっ……あっ、はぁ。ああ……体の疼きが止まらない。奈々未ぃ〜」

私は紫のパンティの上から股間を中指で撫で上げた。
パンティの生地が左右に分かれ、性器の形を模擬している。
そして、その割れ目の谷間、クリトリスの辺りを指で撫であげると、男の体では感じる事が出来ない超越した快感が脳天を貫いた。
まるで、まだ皮が向けていない思春期の肉棒を直接フェラチオされ、イカされてしまう感じ。
いや、それの何倍もの快感が一気に押し寄せてくる感じだった。

「んああっ!す、すげぇ……ク、クリトリス……これがクリトリスの快感……」

最初はちょっと怖くて触りづらかったが、少し慣れてくると猿の様に何度も何度も指の腹で擦り、快感を貪る。

「あんっ、あんっ、ああっ。すげぇっ!すげぇっ!女って……ああっ!マジですげぇっ!」

パンティの中に手を忍ばせ、直接クリトリスを触る。
剥け掛けていた皮を指の腹で剥いて、更に敏感になったクリトリスを夢中で弄った。

「あああっ……あ、ああ……はぁ、はぁ……あううっ」

もう言葉にならない。
こんなに快感のレベルが違うなんて――男はまったく損な生き物だ。
肉棒が何本あっても、この気持ちよさには敵わないような気がする。

「ああっ。も、もう……あっ、はぁ、はぁ……イイッ!」

私は頭を左右に振り、この快感を全身で味わった。
この快感さえあれば何も入らない。
そんな風にさえ思えた。
体に蓄積された快感が、男のフィニッシュと同じような現象を起そうとしている。
これ以上、まだ気持ち良くなれるのか?
こんなに気持ちいいのに、まだ最後の時があるのか?

「あああっ、ああ、ああ〜っ、あ、あっ……いいっ、イ、イクッ、イクッ……もう……あっ……んあああああ〜っ!」

足の指に力が入りすぎて攣ってしまいそうだ。
それほど奈々未の体は気持ちよかった。
一瞬、頭の中が真っ白になる感じ。
女の『イク』という感覚はこれなのか。
これほどまでに――これほどまでに――



私はパンティの中に手を突っ込んだまま、しばし放心状態になってしまった。
初めて味わうには強烈過ぎた快感。
世界一フェラチオの上手い女性に肉棒を弄ばれても、男の体でここまで気持ちよくはなれない。
例えアイドルとセックスしたって、こんなに充実感を覚えられるはずが無い。
それくらい――それくらい女の体は――奈々未の体は気持ちよかった。

いつの間にか顎を伝って流れ落ちた涎を腕で拭き取った私は、また極上の快感を得るためにオナニーを始めた。
今度は奈々未の記憶にあったアブノーマルなオナニー。

「ベルトで手首を縛りながらオナニーするなんてな。顔に似合わず、結構エロのよねぇ、私って。んふぅっ」

ブラウスのボタンを外し、パンティを中途半端に脱いだ私はひたすらオナニーを続けた。
一生の内、二時間という限られた時の中で最大限、女の体を楽しむ。

「あっ、あっ、あっ……も、もう!?ま、またイッちゃうっ!んああっ!」

クリトリスだけではなく、膣の中に指を入れてGスポットを掻きむしる。
どうしようもない快感に二度、三度と続けざまにイッてしまった私。
私だけの時間。私が一人で楽しむ時間。
本人にだって邪魔はさせない。
クリトリスが腫れあがって痛くなるくらいオナニーしてやる。
愛液が枯れる位ベッドにシミを作ってやる。
乳首が切れるくらい摘みあげてやる。
女の快感、底の底まで貪り食ってやる!!

私は最後の一秒まで指を休めず、ひたすらオナニーし続けた。
きっと十回以上はイッたに違いない。
いや、何回イッたかなんて覚えていない。

「気が狂いそうだっ!奈々未ぃ。奈々未ぃ……」

私は、少し痛みを感じたクリトリスを弄りながら、フッと意識を失った――



「ん……」

ガタゴトと揺れる体。
どうやら俺は、自分の体に戻ってきたようだ。
夜も随分遅くなった時間。
列車内には殆ど人が居なくなっていた。
ズボンのポケットに入れていた財布を取り出し、スラれていない事を確認する。

「…………」

俺は車窓に流れる夜の景色を眺めながら、今の今までオナニーしていた奈々未をずっと思い出していた。
もう二度と味わう事が出来ない女性の快感。
一生忘れない――が、もう一度味わいたい。
そう思いながら立ち上がると、開いた自動ドアをゆっくりと潜った――


おわり