はぁ、はぁ、はぁ……

こうやって歩いている最中でも、見えない手が快感を高ぶらせる。
気持ち悪いなんて感覚はもうまったく無かった。
愛撫される気持ちよさと、他人に知られたくないと言う理性の狭間を揺れ動く浩美。

ぅっ……はぁ……ぅぅ……

乳首が硬く勃起し、滑らかなブラウスの生地に擦れる。
触られなくても、こうやって歩いているだけでブラウスが刺激するのだ。

「んっ……ふぅっ」

ふらつきながらも、やっとオフィスにたどり着いた浩美。
すると、社員たちは浩美を見てクスクスと笑っていた。
男性社員はいやらしい目つきで浩美を見ている。

「…………」

感じていても、顔には出していないはず。
身なりだっておかしなところは無い。
社員たちの視線を痛いほど浴びながら机の前に歩いてきた浩美は、言葉にならない声をあげた。

机の上には、探していた下着が置かれていたのだ。
ブラジャーにパンスト、そしてたっぷりの愛液を吸い込んだナプキンつきのパンティ。
しかも、パンティは裏返され、薄黄色に膨れ上がったナプキンが上を向くようにして置かれていたのだった。

青ざめたかと思うと、一瞬にして赤面した。
慌てて……という言葉では追いつかないくらいの速さで椅子に座り、さっと下着を机の下に隠した浩美。
俯いていても、周りの視線を痛いほど感じる。

ど、どうして……誰の仕業っ!?

ハッとして、隣に座っている宮崎を見た浩美。
宮崎は、その視線に気づかないのか、黙々とノートパソコンのキーボードを叩いていた。

まさか……宮崎係長が?

会議で隣に座っていたのは宮崎だ。
宮崎が持ち帰って、浩美の机上に置いたとしか思えない。
浩美は隠した下着を引き出しのショルダーバッグに入れると、宮崎を睨み付けながら話し掛けた。

「ねえ、宮崎係長」
「は、なんですか?」
「宮崎係長の仕業ですか」
「何が?私の?」
「とぼけないでください。宮崎係長が私の……」
「吉原課長の?」
「……わ、私の下着を……机の上に置いたんでしょっ」
「……はい」
「ど、どうしてそんな事っ!」
「どうしてと言われましても……吉原課長が会議室で落としたんじゃないですか。だから私は課長の机の上に置いたんですよ」
「お、落としたって……宮崎係長が拾ったんですかっ」
「私は親切で拾ってあげたのに。そんな物を落として、会議室で部長に見られたら大変でしょう。変態扱いされますよ」

その言葉に、近くの机に座っていた社員が小さく笑った。

「それにしても不思議ですねぇ。どうやってそんな物を落としたんですか?私には理解できませんよ。ねえ吉原課長」
「…………」

真顔で話していた宮崎が、ニヤリといやらしい笑った。

「そう言えば吉原課長。先ほどの会議はいつもらしくなかったですね。何か考え事でもしていたんですか?」
「……べ、別に……してません」
「そうですか?それとなく息も荒かったですし、それに……時折体がビクビク震えてましたよねぇ」
「そ、そんな事ありませんっ。私は……」
「課長。もうすぐ生理なんですか?妙に下り物が多かったようで」
「なっ……」

宮崎が浩美の引き出しに入っているショルダーバッグに視線を移しながら話すと、浩美はかぁっ顔を赤らめた。

「尋常じゃない量でしたねぇ。あれってまるで……」
「いやっ!」

浩美の目から涙が溢れ出した。

「おっと。こりゃ失礼しました。これじゃまるでセクハラですな。はははは」
「ひどい。ひどいわ……ううっ」

他人の目がある事も忘れて泣き始めた浩美は、ショルダーバッグを持ってオフィスを出て行ってしまった。

「宮崎係長〜。あれって思い切りセクハラじゃないですか」
「ほんとほんと。課長に訴えられますよ」
「はははは。まったくだな。私とした事がついつい。まあ、しかし……」

宮崎は両手を見つめながら小さくつぶやいた。

「言葉のセクハラよりも……くくく……」

今も手の中にある生暖かな感触。
そして舌に感じる柔らかい弾力。
今日の宮崎は、これまでの会社生活で最も幸せな一日を送っている……そう感じていた――